ようちゃんとのオリジナル曲

 

 中学校の先生だった時、担任した生徒の一人がようちゃんでした。当時のようちゃんは人の輪に入って、面白いことを言っては周りを笑わせたり、和ませたりする愛嬌のある子どもでした。

 打楽器の演奏はとても優れてましたけど、本人は、「カッコつける」とでも言うか、ギターやエレキベースを弾くのを好み、そのさまは、なかなか決まってました。でもその頃は、かんたんギターなんて考えも及びませんでしたから、文字通り、格好だけなんですけど……。

 

 そのようちゃんがノートに詞を書くようになり、それも毎日、2つも3つも作ってくるんです。家でノートに書いてくるんですけど、容易には読めません。それでも、パソコンのキーボードを叩くことを覚えてからは、朝一で作詞を入力し、プリントアウトすると歌詞を共有できるようになります。

 その場で僕がギターのコードを弾きながら、その歌詞に節をつけていきます。もちろん詞もいい加減ならメロディもデタラメですが、ようちゃんも適当に合わせて歌ってきます。午前中はそんな感じで過ごす日も結構ありました。

 

 本人はサザンやさだましをパクったとか言う時がありました。もちろんプロの歌詞に触発されてのことでしょうけど、真似やパクリの痕跡は見当たりません。

 多くは支離滅裂なラブストーリーなんですけど、なかなか気の利いたフレーズが随所に登場します。彼の作詞は、僕の書いた最初の本「ぼくらはみんなミュージシャン」でいくつか紹介したので、お持ちの方は見てみてください。

 

 で、そのデタラメに歌った歌を僕はもう一度時間をかけて、仕上げるようになりました。そのうちの5曲は、CDの自主制作をサポートする人が現れて、リリースしました。CDが出て、新聞にも載りましたが、紅白にもレコード大賞にも呼ばれることなく、2人の勢いは自ずと消滅してしまいました。

 

 

 その後、ようちゃんから元気というものが失われて、長くしんどい時間が過ぎていきます。

 家から出られないという大変な落ち込みからは、少し回復し、でもかつての活力は想像もつかない日々となりました。

 

 2人オリジナル曲を歌いまくっていた頃からは25年くらいになるのでしょうか……。

 様々な事情が重なって、ようちゃんと僕のユニットKSNがステージに乗る機会がありました。

 

 長いブランクはありましたけれど、オリジナル曲があることで、年を取った2人がこうして一緒に歌えること、良かったなあと、しみじみ思います。演奏の折々、かつてのようちゃんが、瞬間、現れるようにも感じてます。歌ってるときは、2人の関係性が時空を超えるとでも言うか……。画面は爺さんとおっさんなんですけど。まあかっこいい潤さんのピアノがあるからいいか、ということで、是非動画もお楽しみください。

 

 「うただま」チャンネルで紹介した「だきしめたい夜」の歌詞を掲載します。この動画では、ステージの時サポートしてくれたミュージシャンのアドバイスで、少し言葉を付け足して歌っています。

       

 

   だきしめたい夜

だきしめたいよるを まったけど なかなかこない

さぶくて てがうごけなくて

あしが いうこときかない

すでにからだごと こおりに なってしまった

これでは だきしめられないよ あなた

 

だきしめたいから けっしんつけたよ

きせき しんじて たびだつ

くもつきぬける はやさで いくよ まっていてね

せかいを あいしてる せかいを よごさないで

だから わすれないで しんじてよ あなた

 

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コメント: 4
  • #1

    中村 潤 (土曜日, 30 7月 2022 09:30)

    お仲間に混ぜていただきありがとうございます。とても楽しい時間をありがとうございます。Please stay safe and healthy each others!

  • #2

    まんどろ (土曜日, 30 7月 2022 09:44)

    早速のコメントありがとうございます。後の2曲は、次回アップです。よかったら、他のオリジナル曲も応援お願いします。

  • #3

    安田 陽子 (土曜日, 30 7月 2022 21:12)

    HAWAIIのホテルラウンジで聴くような、
    まったり感のあるサウンドですね。
    歌詞はロマンチックで、本人は真剣なのに、どこか切なくて、笑ってしまうアンバランスがいいですね。
    ようちゃんのセンスが光ってますね★☆

  • #4

    まんどろ (土曜日, 30 7月 2022 21:25)

    陽子さん、ありがとうございます。ホンマ、切なくて、笑えますよねえ・・・。ちなみに僕も真剣です。でも隣にようちゃんがいるんで、必要以上に力んでしまうことからは、免れてるような気もします。まあ、どっちもどっちもでKSN(くさい仲)ってわけです。