4冊目の本

 先生を辞めてフリーになった時、初めて本を出してもらいました。タイトルは、「僕らはみんなミュージシャン~知的障がいのある子どもたちとの音楽活動の記録~」。フリーになる前の中学校の特別支援学級が舞台の子どもと音楽の出会い、そしてスウェーデンの音楽専門日中活動所EKOを訪ねて、EKOのリーダーであった大瀧昌之さんから学びの数々を、初々しく綴ったものでした。

 音楽療法士として活動し10年の節目で、「開放弦でできる実践ギター・セラピー~かんたんギター奏で始めよう~」を出してもらいました。その名の通り、僕が実践の中で誰にでもギターを弾いてもらいたいと、編み出した変則チューニングによるギター奏の解説書でした。

 さらに10年、「発達支援のミュージッキング~児童療育・保育園・幼稚園・特別支援学校・音楽教室・音楽療法の先生方のためのガイドブック~」が世に出ました。この本は、実際のセッション活動はほぼほぼリタイアしつつ、引き継いでくださった方に僕の手法をお伝えしたいというものでした。

 その1年後「発達支援のミュージッキング」の前に原稿はほぼ出来上がっていた「うただまの経巡り~ある音楽療法士がたどった14の物語~」を出版にまでこぎつけることができました。

 

 僕は、音楽も音楽療法もきちんと習ったことはなく、断片的な知識と技術で、無手勝流でやってきました。無手勝流と言うと道場破りの剣客も連想されるので、「勝手流」というのが適切でしょう。

そんなこともあって、人から何をやってるのか尋ねられても、簡単には応えにくい。それに、その相手は、詳しい説明を聞く気持ちはそもそもないわけで、「人と音楽する仕事」くらいしか言えませんでした。  

「うただまの経巡り」では、僕が見出したオアイテのリスペクトすべきミュージシャンシップがテーマですけど、そこでも僕の奮闘も描かれてます。それでご近所とか親戚とか、「あいつ、何やっとんのかよう分からん」と感じている人にも読んでもらいたいと思っています。

「かんたんギター」や「発達支援のミュージッキング」が同業者へのアピールだとしたら、「うただまの経巡り」は誰にでも読んでいただける実践から生まれた物語になっているんじゃあないかと、まあそう受け止めてもらえることを願っているわけです。