就労移行支援事業所ミューズラボ伊勢

 就労移行支援事業所ミューズラボ伊勢が開設された。これは村井楽器が音楽療法事業を模索実践する中で、初めて支援費を前提に取り組むことになった福祉事業所である。僕は、ここでパート勤務で、音楽療法士兼生活支援のスタッフとして、音楽を通した利用者さんのアセスメントや具体的な支援を担当する。

 7月オープンを目指し6月中頃にはスタッフが具体的な準備作業を開始し、無事7月1日開所。7月29日は、関係者を招いて盛大なオープンセレモニーも行われた。

 

 音楽による就労支援というのもすぐには結び付きにくい印象があるかも知れないが、実際に社会に出て働く、ということの前提には、履歴書が書けるとか挨拶ができて世間一般の話題で話ができる、などといった実際的な技能よりはるかに根本的なことがある。つまり、心が定まって日々落ち着いて過ごせるということである。具体的には、生活のリズムが整い、安定的な居場所での様々な行いを通しての人とのかかわりが自然に行える、そういうことがなければならない。こうした思いからスタッフ間では、ここでの活動の基本的な方向性として、いわゆる最終目標に向けてのビジネススキル(具体的な仕事としての目的を達成するための技能)、その前提のコミュニケーションスキル(人と自然にかかわる技能)、そしてさらにその前提に自己表現と他者との共有体験、ということを定めた。

 自己表現、他者との共有、コミュニケーションとなれば、まさに音楽療法の出番なのである。

 

 スタッフはいずれも福祉素人だが、素人ゆえの熱意のこもった活動によって、わずか1か月の間に多くの体験利用者を迎えることでき、うち3名の方は実際に利用者になるための手続きが進行中である。

 そして、注目すべきは体験希望のほとんどの方が「音楽がしたい」という申し出であったのである。

 

 実はこのミューズラボ伊勢のいわゆる「売り」は、音楽と、弁当がただ、ということである。弁当に比べれば、音楽の魅力は大したものにならないか、と思っていただが、今のところ、音楽への要望が具体的に強い、ということが分かった。

 音楽療法士として、本当にうれしいし、お一人お一人の利用者さんのお気持ちに添う音楽というものを具体的に作っていかなければならない責務も重く受け止めている。

 一通りではなく、多種多様、一直線ではなくジグザグと、明確さよりは曖昧模糊ととした音楽の共有、そういう歩みがここから始まる期待感が高まっている。音楽は本来誰でも演じる素人の余芸であり、そういう感じが、ここでは実現されるような予感もあって、とてもうれしいのである。

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コメント: 2
  • #1

    カノン (木曜日, 24 11月 2016 10:40)

    初めまして
    吉田豊さんと話してみたいのですが?
    話せないですか?

  • #2

    吉田豊 (木曜日, 24 11月 2016 14:44)

    メールは届いていおりますでしょうか?アドレスを頂いたので、メールしました。もし届いていないのであれば、アドレスと打ち間違えたかもしれません。